やさぐれポンポン

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「コンドームちゃんってゆーの?カワイイねぇー!」  軟質テニスのサークル新入生歓迎会。キツネ女が何か頭悪そうな先生に絡まれている。アイツは酒癖悪いから近付くなって、注意されてたんだけどな。クソ笑えるわ。 「へっへへ、ど、どーもー」  引き攣っててもヘラヘラしてるのはヤンキーの縦社会を順守しているからか、もしくは流石にこの空気は壊せないのか。  軟テの新人はオレとキツネ女のみ。そりゃあっちの方が忙しくなるだろう。 「長野出身なんだって?じゃあ中高はテニス班だったの?信濃の国歌える?」 「あーいやー、どっすかねぇ…」  いい気味である。というか長野県にヤンキーとかいるんだ。長野って蕎麦と軽井沢しか住んでないと思ってたよ。  こっちは上の先生にちょろっと挨拶してあとはお任せ。ごめんねーそっちいけなくて、よかったらオレの分も出席カード書いといて。 「彼氏いるの?経験人数どれくらい?ねぇねぇ…」 「せ、せんせーぇ新入生挨拶あるんでそろそろ…」 「あ?今オレにしてんじゃねぇか、あっちのチビに先させとけよ」  おお、だいぶ召してらっしゃるようだ。キャプテンがやんわりと守ろうとしてるが全然止まってない。 「す、すいません…」 「なんで謝るのー?もっと長野トークしよーよー」 「すい……ません…」  わっかり易く青筋が立ってる。そろそろ限界か?やったれやったれ。お得意のネリチャギかましてそのまま辞めちまえ。 「すいません……す、すいま…」  あ、ダメだ。イライラする。  我慢出来ないのオレだったわ。 「おらキツネ女ぁ!テメェん挨拶だって先輩呼んでんだろぅが!」  怒鳴って立ち上がり、フラフラと近付いてやる。誰かが「おい飲ませたのか?」とか言ってる。飲んでねぇよ。 「そのオッサンは親戚のカカシかテメーコノヤロー!?寂しくて田舎から連れて来ちゃったんかコラぁ!」  こんなんはヘイトこっちに向けときゃいーんだよ。そのオッサンもいい大人なんだから、酔いが覚めればきっと常識的なぶっがごっ! 「……押忍っ!!!」  みぞおちに痛みが届く頃には、オレはとっくに胃の中身を吐き下していて、 「うしっ、辞める」 まさか助けたキツネに殴られるとは夢にも思わず、オレはただただ這い蹲ってうーだかあーだか唸っていた。  後に聞いたが『空手班』だったんだってよ。  セクハラかましてたオッサンからは、翌朝直ぐ顧問宛に謝罪メールが届いていたそうだ。毎回そうらしい、大学ってとんでもねぇな、何なんだマジで。  オレ?未成年飲酒の冤罪でサークル追放。というか、面倒がられて体良く追い払われた。
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