やさぐれポンポン

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「乳歯抜けた時よ、装置付けて隙間作っとけば八重歯どうにかなってたんじゃねぇかなコレ」  小児歯科の授業を受けてから今日ずっと言ってる。うっとおしい。 「それでもスペース足りなかったろうねって、言われてたろうよ」 「いや、コレよりマシだったハズだ。とにかく私は感動したね。卒業したら小児歯科の大学院行くんだ。今日決めた」 「大学院、ねぇ…」  ここは生徒会室。今の所属はここである。  余所は知らんが、ウチの生徒会はほとんど仕事がない。大学からのサークル費用の振り分けと、学生向けHPの管理、あとは文化祭と後夜祭の挨拶くらい。  暇、とても暇。 「冗談だろ?」  暇なので、HPに鍵付きの部屋を設け、各講義の過去問題集や先達のまとめた講義ノートをデータベース化して公開してやった。リテラシーが裸足で逃げ出す行為である。  そもそもは、どうやら生徒会室に結構な数プールされているらしいとキツネから聞きつけ、それさえ手に入れば、ぼっちのオレでも安心だという事で始めたものである。 「今、院に登る梯子外してるって、自覚ねぇの?」 「別に金取ってる訳でもねぇし。何で?みんな助かるだろ?」 「テメェみてぇなのがいるから金取れねぇんだよ。作業量考えたら百万くらい欲しいっつーの」 「頼まれもしねぇ事やって百万くれっつーのは随分じゃねぇか。金の事ばっか考えてると頭まで貧相になんぞ?チビデブでハゲたらもうオマエおしまいだぞ?」  好き放題言ってくれんな。 「オレが儲かってなんか悪い事あんのか?」 「ああ?だってオマエのもんじゃねぇだろ、コレ、全部」 「みんながして欲しいのに誰もしないからオレがやって、そのリスクや損もオレに丸被りしろって、テメェはそう言うんだな?」 「そうは言わねぇよ。じゃあ金取れよ、別に止めねぇから」 「だから、取ったらテメェみたいなのが言い付けるだろって。そしたら声かけたサークルみんな困るだろっての。テメェも困んだろ、がっつり関わってんだから」 「じゃあもうやめたらいいだろうよ面倒臭ぇ」 「オレはこの資料が欲しいんだよ!集めちゃったんだからやらない訳にいかねぇだろうが!」  誠に遺憾ながら、どうしても足りない資料はコイツに頼んだ。陰キャの限界である。 「ちっ、うるせーあーうるせー、いちいちキレんなよ」 「八つ当たりだバカヤロー」  結局、このデータベースは完成をみぬまま存在がバレ、オレはすわ停学、下手したら退学というところを諸先生方が何とか庇ってくれた。本当に申し訳ない、大いに反省はしている。  が、正直納得はしていない。過去問は公然の秘密だし、まとめノートについては年々サークル内で受け継がれていたものである。鍵付きとはいえ全世界に向けて公開してた事が問題というのならば、オレみたいなぼっちでも公平に資料が行き渡るよう、誰かが何かをするべきである。オレがやった、ダメでした、ぼっちは今後も資料分自助して下さいじゃ報われなさすぎるだろう。  関わった人間全てを処罰すると影響がデカ過ぎるってのが助かった理由だろう。お偉方がネットに明るくなかったのもそうか。  以降、オレがまとめたデータはUSBにて、有志により手を加えられながら受け継がれているようである。  無料でも黙ってられないバカはいる、教訓ってやつだ。ホント、やってられない。
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