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卒業式が、キライだ。
別に深い理由はない。イヤなのだ、『さよなら』がキライ。
みんなして感極まって泣いたり、別れを惜しんだり、最高だったなんて称え合ったり。
卒業式は特別な日だろうか。つまらなそうに日々を投げ捨てておきながら、その日だけは感情が昂るというのがどーにも納得出来ない。
別れという言葉もキライ。遊ぶヤツとは遊ぶ。末期の別れになるヤツはそうなっていいヤツ。
卒業アルバムも要らない。寄書きも要らない。
まあそんな訳で、
「おいタヌキ、返事しろやせめて」
学位伝達式。大学の卒業式である。オレの事をタヌキと呼ぶこの女についても、特段思うところはない。
「どーなんだよ?何かいえよ」
「へぇ、オマエオレのこと好きだったのか」
どこまでもふざけた女だ。
呆れ返っているオレに、女は意外にもはっきりと頷く。
「そこそこ」
「脳外科受診してから出直してこいバカヤロー」
卒後一年間の研修を経て、それからは別の道。
コイツは小児歯科の大学院。オレは他所で就職。
後腐れなし、これでいいのだ。
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