夢の話

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「ねぇ、聞いてよ…!」 「ん…?何?」  いつものように眠たそうな眼で、彼はこっちを見た。私は構わずに、そんな彼に話しかける。 「最近、たまに変な夢を見るんだよねー」 「変な夢…?一体、どんな夢なの…?」  彼はピクッと(まゆ)を上げて、食い付いてきた。 「私がね、何とも(おぞ)ましい化け物になっちゃうの!」 「ば、化け物に…?」  彼は、ゴクリッと(つば)を飲んで、険しい顔になった。 「うん…!身長は三メートルくらい?腕は四本あるし、ツノも生えてるし、牙もグワーってなってるし、爪も凄いの。なんか鬼みたいな感じかな…?」  彼はこの手の話が弱いらしく、真っ青な顔になっていた。 「そ、それで…?」 「それでねー、『やましい事があるだろー!』って言いながら、アナタを追いかけ回るの。で、結局はアナタは、逃げきれずに捕まって、私がアナタを()め殺そうとするんだけど、アナタが泣きながら、『もう、浮気はしません…!許してください…!』って謝るから、私は許しちゃうんだよねー。夢は、いつもここで終わるの。ねー⁈変な夢でしょー⁈」  彼は、ビクビクしながら言った。 「ほ、本当、変な夢だね…。でも、いくら夢の中だからと言って、本当に俺のことを、殺さないでくれよ…⁈」 「当たり前でしょ…!…。でも、もし本当に浮気なんかしたら、夢の中なんかじゃなく、本当に化けてやるからね〜⁈」  彼女は、そう言って嬉しそうに笑っている。俺も、『ハハハッ…』と笑い返しているが、心の底から恐怖していた。  何故なら、彼女が言っている事は、夢の出来事では無く、“俺が浮気(俺にその気がなくとも、異性と楽しそうに話しているだけでも)をした夜に起こる事”なのだから…。そう。彼女は、夢と思っているこの話は、紛れも無い“現実”の出来事なのだ。  彼女は俺に、ニコニコと嬉しそうに肩を寄せて言った。 「ねっ!ずっーと一緒に居ようね⁈」 「あぁ…。そうだね…」  もし、俺が彼女に『別れよう』などと切り出したら、一体俺は、どうなってしまうのだろうか…。終
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