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沙夜は、週一で学習塾の講師のアルバイトをしていたが、社会勉強にと、飲食店でも月に何日かアルバイトをしていた
マスコミ系のアルバイトをした事もあったが、
華やかな、でも作りモノの世界が
自分にはしっくりこないような気がしたので、
辞めてしまった
このところ、卒論の仕上げであまりシフトに入っていなかったが、無事に提出までこぎつけたこともあり、久しぶりにバイトに入ることにした
銀座の高級料亭で仲居の仕事である
利用するお客さんは、お金持ちで個性的な感じの人が多く、仲居は着物なので着付けの勉強にもなるし、時給も悪くない
ただ夕食の時間帯のため、
帰りが遅くなるのが難点で、
埼玉の実家暮らしをしていた沙夜は
電車の終電までの時刻表を頭に刻んだ
彗の公開告白から1か月ほど経ったクリスマスも近い水曜日
銀座の街はイルミネーションで彩られ、かなりの人出だったが、たまたまその日はラストオーダーからお客さんの引けが早かった
店仕舞いを終え、何人かの同僚と店を出ると
誰かが
「わりとまだ早いから、お茶してかない?」
と言い出した
一瞬、行こうかとも思ったが、
明日は授業が1限からあるし、
断ろうとしたその時
少し離れた通りのガードレールに見覚えのある人影があった
「彗くん…?」
気がついた同僚も、沙夜の視線の方向を見て
「あら?沙夜さんのカレシ?」
「銀座まではるばるお迎え?良いわね〜」
などと口々に言い
女将も
「じゃ、一緒に帰らなきゃ」
と笑って沙夜の背中を押した
「すいません、お先に失礼します」
と皆に挨拶すると、小走りで彗の元に急いだ
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