と.も.だ.ち

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彗の私服姿を見るのは初めてだ 今時の若い男の子らしく、 黒いスキニーのパンツに、白のプルパーカーの上からジャケット 「(あ、私服姿もかっこいいな…)」 沙夜がすぐそばまで来ると彗は 「おつかれさまっす」 と言って沙夜を見た 「ビックリした、来るなんて思ってなかったから、急にどした?」 と沙夜が返すと 「なんか…顔見たくなって…今日バイトだって言ってたし、場所はわかってたから…」 「前もって連絡くれてたら良かったのに」 「うん…迷惑だった?」 沙夜は、クスッと笑い 「迷惑なんかじゃないよ、送ってくれるの?」 「うん、良かったら」 お互い顔を見合わせて微笑み合うと、彗はちょっと照れくさそうに左手を沙夜に差し出した 沙夜は、少し戸惑いながら 「(手を繋ぐだけなのに、なんかこっちまで照れちゃうわ)」 ニヤケている表情がわからないように、 左の手でマフラーを口元まで上げながら、 右手で彗の手をそっと掴んだ 「(距離感、コレ友だちじゃないよね)」 沙夜はそう思いながらもまんざらでもなく、 わざわざ銀座まで顔を見に来た、と言う彗に 「(弟?も、違うよね)」 沙夜には自然とそれ以上の感情が湧き上がっていた 寒い中、どのくらい彗が待っていたかわからないが、その手は大きく暖かい 「結構待った?」 「いや、そうでもない、10分くらい?思ったより早かった」 「それに親御さんとか、心配しない?こんな時間まで高校生が家にいなかったら…」 「大丈夫、塾行く日もこんな感じだし、男兄弟2人いて親も免疫あるから」 と、こともなげに言う 地下鉄の改札に入ると、ちょうど沙夜が降りる駅までの直通に乗ることができた 銀座を出る時には、かなりの乗客がいたが、終点に近づくにつれまばらになり、 次は終点と言うときには、 沙夜たちの車両には 数えるほどしか乗客がいなかった
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