乙子月(クリスマス)

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とてもおしゃれな出で立ちをしていたので 「あれ?母さん、出かけるの?」 彗が聞くと 「こないだ言ったじゃない、あなたおにぎり食べながら聞いてなかったの?」 と言われ 「なんか言われたような…」 彗が口籠る 聞くと、今日は高校時代の友人とホテルのクリスマスディナーを楽しむとの事で 彗の母曰く 「モダンマダムの会」 時折、女子校時代の仲間と集まって、 食事をする会らしい(実はこの女子校、沙夜も同じく卒業生なのだが、それがわかるのはもっとずっと先のことである) 子供たちもみんな大きくなり、クリスマスに誰も家にいない、つまらない、と言った理由で、今年は会のメンバーと集まることにしたそうだ 沙夜が手土産を渡しながら、先日彗の帰りが遅くなったことを詫びると、 「夜遅くに女の子を一人歩きさせる方が心配よ、こんな頼りないボディガードでよければいつでも使ってちょうだい」 と笑った 「陸は?」 陸、とは3人兄弟の真ん中で彗にとって次兄だ 彗によると、やや年離れた長男は商社マンで、 現在海外赴任中、 両親の信頼も厚くしっかりしているが、 次男の陸は年齢が近いくせに、パシリで使われていたことを彗は恨みに思っているのか、チャラ男で信用できない、らしい 「ガレージに車なかったでしょ、とっくに彼女と車でどこかへ出かけたわよ」 「そうなんだ」 「沙夜さん、せっかく来て下さったのにバタバタしてごめんなさいね、唐揚げを作っておいたからよかったら召し上がってね」 「ありがとうございます」 「うちはむさ苦しい男ばかりだから、女の子は大歓迎なのよ、彗が彼女を連れてくるのも珍しいし」 と沙夜に言い、彗には 「帰りはちゃんと送って差し上げなさいよ」 と言って慌ただしく出て行った
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