夢見月

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夢見月

クリスマスが終わり、街は師走、正月を迎える準備に切り替わる 学校は、冬休みに突入 沙夜は相変わらずアルバイトをぽつぽつ入れていたが、テストを受けねばならない授業がいくつか残っていて、年明けから図書館通いをしていた 彗とは、かろうじて初詣に行ったが、 その後、彗の方が家族旅行に行ったりして (単身赴任先の父親がこちらに戻ってくることが 決まり、そのための下準備もあったようだ) タイミングが合わず、 沙夜はテストも終わり、学校に行く用事がなくなると、彗と待ち合わせて帰る事もほとんどなくなっていた ただメッセージアプリでのやりとりはしていて、 この週末は一緒に買い物に出かけることにした 銀座の専門店に行き、沙夜は卒業旅行の為のトラベルグッズが買いたかった 必需品として 沙夜がモバイルバッテリーを買うと 彗も友人らと卒業旅行を計画しているそうで 自分もスーツケースを見たいと言いだし 売り場を移動した 「兄貴のお下がりは嫌」 と言う気持ちは なんだかわからないでもないが どれも結構いいお値段… 彗は機能性の良いものを探していて 店員さんに使い勝手を聞いたりしていた 彗が実際に試していると 店員が沙夜に話しかけてきた 「卒業旅行ですか?」 と聞かれ 「ええ、まあ」 「お姉様ですか、お買い物に付き合われて、 仲が良いんですね」 「えっええ…」 沙夜は、曖昧に微笑んだ 「(えーっ!姉、弟に見えるって事よね? てか、そう思ってもここは何も言わないのが ショップ店員心得じゃないの?)」 おそらくその店員には何の悪気もないのだろう しかし、その言葉のインパクトは 沙夜の心に黒いモヤモヤを残した
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