半夏生

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しかし、最近では女子ウケ、というか SNS映えするカフェや オシャレな居酒屋も増えている 今日は、その中でもハワイの雰囲気や メニューを売りにしているお店にした 店中に入るとハワイアンミュージックが流れ さまざまな観葉植物の緑が 心地良い 最初の一杯は、定番の生ビール 軽く世間話 二杯目からは、それぞれカクテルメニューに 目を移す 「レゲエパンチ」 「美味しいの?ソレ」 「知らんけど、ネーミングにパンチ有り」 「私はピニャコラーダにしよ」 「もう過ぎちゃったけど、この季節、半夏生とか言うの、タコ食べる習慣あるんだって」 「何ソレ?聞いたことない」 店員を呼ぶ 「タコを使ったハワイアンなんてあります?」 「ハワイアンスパイシーマヨポケだと 薄切りのタコが入っています」 「じゃあそれで」 アロハシャツを着た店員に オーダーを伝えると 典子は声を抑えめに 「なんもないって、一切関わりないの?」 「ないよ、キレイサッパリ 引越し祝いに冷蔵庫くれたけど」 「冷蔵庫…?」 「冷蔵庫、結構デカい」 「はぁ〜?よくわからんセンスだわ〜 嫁が欲しがってたヤツだけど、 君に先に贈るよ、的な?」 「ププッ」 思わず笑ってしまう 「早く良い奴見つけて、結婚しろよ でも、二人が使う冷蔵庫は俺が買ったけどな、 って冷蔵庫マウント」 「きっとそこまで考えてないよ〜 それに、冷蔵庫に罪は無いのですよ くれるんなら遠慮なく貰います!」 親にいつも「節約!」 を叩き込まれていた沙夜は その辺の割り切りが早い 元カレからのプレゼントも 別れたら捨てる、と言った感覚はなく、 フツーに使い続ける リサイクルショップで、高く売れると聞けば そうするかもしれないが 「てか、案外立ち直りが早いよね、沙夜」 枝豆を食べながら典子が言うと 「うーん、よくさ、不倫に興じている男女って、結局、恋愛の美味しいところをつまみ食いしたいだけって言うの、あれホントだね」 「あらあら、冷静に分析しちゃってるよ」 家まで押しかけられ、三人で話し合った時も 現実逃避したい自分がいて どこか他人事ように 彼の言い訳を聞いている 2度と会わない といった誓約書を書かされ ようやく解放された時には 彼への思いは すっかり冷めていた
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