レトロ喫茶

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レトロ喫茶

「(なんとなく離れがたくて『お任せ』しちゃったけど… 離れがたい?って今、私思った?)」 沙夜の心が一瞬、モヤッとする スエット姿から、 白の半袖Tシャツに ベージュのチノパン、 スエードシューズに着替えた彗は、 カジュアルな雰囲気で それらがよく似合っている 「お待たせ」 そう言って 彗が連れていってくれたのは、 公園から少し歩いた所にある喫茶店だった カフェと言うよりは「喫茶店」  と言う表現がふさわしい昔ながらのお店で、 年配のマスターが1人で切り盛りしている 店に入るとコーヒーの香りが漂ってきた 土曜日でもランチをやっており、 美味しくてコスパも良いので、 練習を見た後に1人でよく来ていたのだと言う それほど広くない店内は、 カウンター席に常連さん風の人、 サラリーマン、 それに近所?のご婦人たち 女子高生… 「結構混んでるね」 「ちょうどお昼時だからね」 彗と2人、奥の席に座ると 「いらっしゃい」 そう言ってマスターがテーブルに水を置いた 「2人ともランチで、食後は…沙夜、飲み物は?」 「私は…アイスコーヒー」 「じゃ、アイスコーヒー2つ」 「かしこまりました」 マスターが戻っていくと  沙夜はキョロキョロと、店内を見回し 「今流行りのレトロ喫茶?」 小さい声で言った 「こういうとこのが落ち着くから、沙夜はもっとオシャレなとこのが良かった?」 「うううん、懐かしい感じがして好き、て言うか、クリームソーダにすれば良かったかな、 様式美でしょう、タマコサンドとプリンとクリームソーダ、喫茶店の」 彗が俳優のモノマネをして 「あるよー」 と言ったので、2人は顔を見合わせてクスクス笑った
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