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しばらくすると
「久しぶりに来たと思ったら、お連れの方がいるなんて珍しいね」
注文したランチの皿を置きながら、
マスターが彗に言う
「こっちに来る予定はなかったんだけど、
たまたま…そしたら知り合いに会ったもんで」
「(知り合い…彗に気を使わせちゃってるな)」
沙夜の心が再びモヤっとする
それを聞いてマスターは
「おや、お似合いだからてっきり彼女かと」
「いま、口説いてる最中、見守って」
「あ、余計なこと言っちゃったね」
と言いながらも沙夜の方を向くと小声で
「いや、彼イケメンだからさ、ファンも多いのよ、ここんとこ見えなかったから、何曜日ならいるのかとか、女性のお客さんに聞かれるの」
それを聞いて沙夜がクスッと笑うと
彗は少し慌てたように
「沙夜、マスターは、話盛ってるから」
そんな彗にはお構いなしで
「彼がいつも座るこの席も、ファンの間では神席って言われてんのよ、今日もホラ、あそこの女子高生…」
と言って、それとはわからないように目配せした
マスターが行ってしまうと
「彗、ファンいるんだ〜、モテモテ!」
「オーバーなんだよ、マスターは」
お皿にはサラダとデミグラスソースがたっぷりかかったハンバーグ、スパゲティナポリタンが少しだけ添えられていた
彗はライス、沙夜はパンにしたのだが、
メインのおかずだけで結構ボリュームがあったので、パンを食べきれそうになく
「彗、よかったら手をつけてないからパン食べて」
と言うと
「ありがたくもらう」
と言って、沙夜のお皿からパンを取ると
自分のお皿に置いた
少し離れた席にいる女子高生たちから
小さなキャーと言う悲鳴のあと
「尊い…」
と言われたような気がした
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