610人が本棚に入れています
本棚に追加
沙夜がキャンパス内に入ってからも
更に後ろから追いかける声がしたが
「(はい、サービスタイム終了!)」
心で叫ぶと教室へと急いだ
「あの時の子かぁ、ごめんね、あんま顔とか覚えてなくて」
「いえ、…食べてるの、うどんですか?」
「そう、かけうどん、安いから」
理由を聞いた学生はフッと笑うと
「お姉さん…可愛いですね」
「(あら、まあまあ直球)」
「俺と付き合ってくれません?」
学食特有のザワザワした雰囲気に、
沙夜は気がついてなかったが、
どうやら他の学生らから
かなり注目されていたようで、
告白の瞬間どこからかヒューッと
囃し立てる口笛が聞こえてきてハッとした
街中でも目立つ存在の沙夜は、
ナンパやら直球告白、いきなり名刺を渡され、
裏面を見ると携帯の番号が…
などと言うのは日常茶飯事だったが、
相手をよく知らないにもかかわらず声をかけられ、付き合ってだのなんだの言われるのに
辟易していた
大学も推薦では無く、一般入試で入った沙夜は
予備校に通っていたが、そこでもあれやこれや男子学生からちょっかいかけられ、
「受験生なのに、付き合うとか何事か!」
とイライラした時期もあった
今日も同級生らと一緒に食べていた事もあって
「(学内で知ってる子たちもいるのに恥ずかしいなぁ…)」
そう思った沙夜は
「どこに?」
我ながらベタな返しだと思ったが、
努めて冷静に答えた
意外にもその男子学生は怯む事なく
「じゃなくて、男女のお付き合い」
と、ハッキリ言うと、沙夜の顔を見つめた
「(何もみんなの前で恥かかせる事もないか)」
そう思った沙夜は
「私、今日3時半に授業終わるけど、君…えっと名前は?」
「三浦 彗」
「三浦くんは、何時に終わる?」
期待と不安が入り混じったような表情で
「俺も3時半です」
「じゃあ、駐輪場の辺りで待ち合わせね」
「はい…了解です!」
「じゃ、3限が始まっちゃうから」
席を立った沙夜の視界に、
小さくガッツポーズをする彼と、
周りを取り囲んで冷やかす彼の友人らを収めながら、学食を出た
最初のコメントを投稿しよう!