「よく頑張ったね」の一言で全てがチャラになる訳では無い

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「よく頑張ったね」の一言で全てがチャラになる訳では無い

「ご主人様、「よく頑張ったね」の一言で全てがチャラになる訳では無いんですよ。ご存知ないんですか?」  ラブホテルのベッドの上。腕に抱く奴隷が、真っ直ぐとした瞳で僕にそう言った。 「……うん?」 「聞こえませんでした?」 「いや、聞こえたけど……」  奴隷(ミユという)は身体を起こすと僕にも座るように促した。正座になってちょこんと座るミユに倣って、僕も正座になる。 「満足出来なかった?いやだった?」 「プレイの事ではありません」 「えー……」  ミユは呆れたような顔をした後、ずいっとこちらに身を乗り出した。 「ツイッターで他の子にいいねしてましたね?」  そう言うミユの表情は真剣そのものだ。  確かに可愛い子や良い身体の子が流れてきたら脳死状態でいいねしているかもしれない。知り合いの奴隷ちゃんの写真とか、RTで回ってくることだってある。だからミユの言う「いいね」がどの子の事を言っているのかも分からないし、いつの事だかも分からない。そもそもいいねなんかよく考えずにしているもんではないだろうか。 「謝ってください」 「え?」 「謝ってください、ミユに。ツイッターでキレ散らかさなかったミユに謝って、我慢してくれてありがとうって言ってください」  一歩も譲らないという目だ。いいねをした位で大袈裟な……とは思うが、ミユにとって大事な事なら仕方ない。  僕は姿勢を正すと、改めてミユに向き合った。 「えー…っと、ごめん、ミユ。我慢してくれてありがとう」 「もう他の子にいいねしないって約束してくれますか?」  だからそれは……と言おうとしたら、ミユの眉がピクっと動いた。あぁ、だめだこれは。言い訳も許されないやつだ。 「約束するよ」 「ご主人様の奴隷はミユだけですか?」 「ミユだけだよ」  そう言うとミユは嬉しそうに双眸を弛め、僕に抱きついた。 「なでなでもして欲しいです」  請われるまま、頭を撫でる。ミユは安心したかのように息を吐くと、僕の胸に頭をぐりぐりと擦り付けた。まるで猫のマーキング行為のようだ。 「これからもミユだけを見ていて下さいね、ご主人様」
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