11.解放してやってくれ

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ーー爽人翠。 お前はずっと、戦っていたんだな。 「解放してやってくれ。こいつを」 強い瞳で女を見据える。 ミントの震える指先を、桜太郎の右手が優しく包んだ。 周囲の買い物客もただならぬ気配を感じ取ったらしい。 いつの間にか、ミントたちは注目を集めていた。 女は舌打ちをしてから、憎々しげにこちらを睨みつけた。 「悪者扱いしてんじゃないわよ。 ああ、もういい! 勝手にして!」 そう吐き捨てて、踵を返す。 女の後ろ姿を見つめながら、ミントはすっと息を吐いた。 ーー爽人翠。自分を責めるなよ。 目を瞑る。瞼に力を込めた。 涙がすっと引いていくのがわかった。 重くのしかかっていた悲しみの感情が、少しだけ浄化されたような。 ーー俺が、お前の分も生きるから。だから……。 願わくば爽人翠の魂が、安らかであるように。 指先で感じる桜太郎の体温が暖かくて、ミントは妙に安心するのだった。
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