第九回路

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第九回路

夢を見た。 「詩織、今日はあなたの好きなオムライスよ」 私はフォークを持って足をバタバタしている。 「知ってるよぉ……早く早く!!」 私の体が誰かに操られているかのよう。 意図していないのに勝手に口も動いている。 これが夢だとわかっているのであれば好き勝手動けるのではなかっただろうか。 「ありがと〜…ママの料理は世界一だよ」 オムライスを口に頬張りながら笑った。 あぁ…でもロボットは夢を見るだろうか。 これは夢ではないのかも知れない。 もしかしたら……… と、場面が変わった。 「詩織…無理しないでいいのよ…?」 先程の女性が私に声をかけた。 「いいの!私、ママのお手伝いがしたい!!」 手元を見るとどうやら包丁で人参を切っているようだ。 少し危なかっしいが、きちんと猫の手などはできている。 女性は私の顔を後ろから両手で包んだ。 「……詩織ありがとう…」 その瞬間、心の中がふわっと温かくなった。 と、段々とその風景がぼやけていく。 私は目を擦ったがぼやけるのは止まらなかった。 白色に染まっていき、瞬きをするごとに黒に近づいてきていた。 「九十九ちゃん……」 暗闇の中で誰かが私の頬を触った。 「……誰」 わかるでしょ、その声の持ち主は言った。 私は目を凝らしよく見た。 ぼんやりとぼやけていたが、その子は泣きながら笑っていたのが見えた。 「私は…花岡……花岡詩織よ…」 頬をなぞられた。 私よりも明らかに一回り小さい体であった。 私は手探りで彼女の頬を触る。 私のと同じ肌であった。 「あなたが………私の皮膚の持ち主?」 彼女は私の手を両手で包み込む。 私には自分の皮膚と同じか確かめているように見えた。 「ええ」 「そう……ごめんなさい。私なんかが作られなければあなたは死なずに済んだのにね」 彼女は私の手を離す。 そして濁りのない目で私を見据えながら言い放った。 「あなたはロボットじゃないのよ!人が生まれてくるのに誰かの許可がいるかしら?あなたが生まれてくるために私は喜んで犠牲になったのよ」 私の頬にまた彼女の手が伸びた。そしてゆっくりと撫で、離していった。 「…お願い、わかって」 続く
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