![7db25c40-6d2f-40b8-b573-4c05dddfaf86](https://img.estar.jp/public/user_upload/7db25c40-6d2f-40b8-b573-4c05dddfaf86.jpg?width=800&format=jpg)
「そろそろ…お別れね」
彼女の声が遠のいていく。
「まっ……」
手を伸ばした、がそれは暗闇に溶けた。
「またね」
彼女ははっきりとそう告げた。
「ハァハァハァ………」
私の電源がついた。
壁に寄りかかっていたので起き上がるということはない。
いつのまにか前に伸びていた手をゆっくりと下ろす。
「花岡詩織…あなたはこの中に…私の中にいるの」
問いかけても返事はない。
かわりになったのは
ピロン♪
というメールの届く音だ。
「誠人だ…」
足を上げ、PCの方へ歩いていく。
「九十九ちゃん……いい名前ですね!」
メールの返信はこうであった。
私はキーボードに手をおく。だが不思議と返事が思い浮かばなかった。
しばらく考え、パタンとPCを閉じた。
私は…九十九ちゃん。そうそうなのだ。
でも、ここで私自身のことを認めてしまったら花岡詩織、彼女はどうなってしまうのだろう。
ふと嫌な想像が思い浮かび、いやいやと首を振った。
今まで仕入れた情報のすべてがその可能性を比定している。
彼女が私の中からいなくなるはずがない。
もし……いなくなるとしたらきっと私の方なのだ。
続く
最初のコメントを投稿しよう!