第十回路

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第十回路

7db25c40-6d2f-40b8-b573-4c05dddfaf86「そろそろ…お別れね」 彼女の声が遠のいていく。 「まっ……」 手を伸ばした、がそれは暗闇に溶けた。 「またね」 彼女ははっきりとそう告げた。 「ハァハァハァ………」 私の電源がついた。 壁に寄りかかっていたので起き上がるということはない。 いつのまにか前に伸びていた手をゆっくりと下ろす。 「花岡詩織…あなたはこの中に…私の中にいるの」 問いかけても返事はない。 かわりになったのは ピロン♪ というメールの届く音だ。 「誠人だ…」 足を上げ、PCの方へ歩いていく。 「九十九ちゃん……いい名前ですね!」 メールの返信はこうであった。 私はキーボードに手をおく。だが不思議と返事が思い浮かばなかった。 しばらく考え、パタンとPCを閉じた。 私は…九十九ちゃん。そうそうなのだ。 でも、ここで私自身のことを認めてしまったら花岡詩織、彼女はどうなってしまうのだろう。 ふと嫌な想像が思い浮かび、いやいやと首を振った。 今まで仕入れた情報のすべてがその可能性を比定している。 彼女が私の中からいなくなるはずがない。 もし……いなくなるとしたらきっと私の方なのだ。 続く
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