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第一回路
「それでは最後の仕上げを始めます。みんなちゃんと見ておくのよ」
ごくり、と唾をいつもより多めに飲んだ。
最後の仕上げに入る、それはみんなにとっては絶望の瞬間だった。
シュッ。
机においてある物体にメスが通る。
血は溢れ出てこない。
凍血剤を使っているからきれいに皮膚がはぎ取れるのだ。
昔にはなかった、いや必要のなかった薬。
「第一部品。原田くん早速貼り付けて」
「は、はい。」
原田の声が震えた。
原田は先生から第一部品を受け取るとロボットに貼り付ける。
一部分だけ人間のようになった。
シュッ。
メスはどんどん皮膚を剥ぎ取っていく。
先生は部品を生徒に渡すとロボットを組み立てるように指示を出す。
「先生、次の部品はどこですか」
一人勇気のある生徒が先生に聞きに行く。
「もう…足りなかったのね。花岡さんは少し小柄だったから…」
机においてある物体、いや花岡だったものはすべて皮膚を剥ぎ取られていた。
ロボットは目の部分だけ骨組みが剥き出しになっている。
「仕方ないわ…」
先生は謎の光を宿した目を生徒に向けた。
ヒッ…と誰もが怯えた。
「安心して?きちんといいように使ってあげるわ。花岡さんのお母さんの手伝いなんかじゃなくて学校の雑用係にしてあげるから」
そう、結局はロボットはみんな学校に寄付されるのだ。
誰も手を上げない。
「いいの。くじにしちゃうわよ」
無言。
それは早業だった。
机に倒れ込んでいたロボットが突然意思を持ち始めたように先生の首に手を回した。
ヒッ…と今度は違う怯えが教室中に蔓延する。
「カアサン…テツダイ。ヤクソクシタ……」
ロボットの目が赤く光ったかと思うと先生の口は更に赤くなる。
「う゛っ……」
ロボットは手に力を入れた。
先生が何かを言おうと口を開いたが、それはもう何も言わなかった。
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