ミイラ取りがミイラに

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ミイラ取りがミイラに

オッサンからの連絡を受けた若い男が通報したのだろう。すぐに何台ものパトカーがやってきた。 オレの6年間の逃亡生活は『逃亡中』という番組内で終わった。 オレは昔、闇の仕事で賞金稼ぎを繰り返していた。そしていつしか指名手配犯となった。何度か捕まりそうになったが持ち前の勘で幾度となく逃げ切ってきたのだった。 ここ数年コロナが流行り全ての人間がマスクをするようになった事であまり周りの目を気にせず暮らしていても警察官にさえ気づかれる事が少なくなっていた。 毎日警察官に‘’追いかけられる‘’そんな刺激のある生活が少し懐かしく思え気持ちがうずうずしていた。オレ様ならどんなヤツからでも‘’逃げ切れる‘’そんな野望がうずいた矢先の『逃亡中』であった。 「まさかあの若僧がオレの素性(しょうたい)を知っていたとは…。」 連行されるパトカーの中で思い返す。 アイツはオレが『逃亡中』に当選した時、自分の事のように喜んでくれていた。しかしそれは本当にに喜んでいたのだ。 あの短い時間で今回の逮捕劇のシナリオを描き自分が苦労しなくとも簡単に大金を手に入れた。 「賞金稼ぎだったオレ様が賞金稼ぎに狙われていたとはな…。面白ぇじゃねえか。」 ──尚、この『逃亡中』が放送されたかどうかは闇の中である。 ─BAD END─
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