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小さな男の子の帽子の下に、ニセモノだけどうん○を置いてしまったというプチ罪悪感から逃れるために、私は必死で蝶を追いかけた。
「でも、手で捕まえるなんて無理だよ! 網か何か持ってこないと!」
「分かった、俺は家に寄って網を持ってくる。その間、藤川は蝶を頼むぞ!」
椎名くんは途中で道を折れて、自宅に向かっていった。
責任重大じゃん!
幸い、蝶のスピードはそんなに早くない。まだ追える。しかも、ちゃんと道の上を飛んでくれている。
急に屋根の上に飛んだりしないでねと祈りながら追い続けていると、私のスマホが鳴った。
着信相手は椎名くんだ。
『藤川、まだ蝶は追ってるか⁉︎』
「うん、今、中谷3丁目!」
『良かった。ところで網なんだけどさ、昆虫採集用のやつがないんだ。代わりにバドミントンのラケットでもいい?』
「いいわけないだろ、バーカ!」
どうやってその網で捕まえるのさ。
なんとかして虫取り用の網を持ってこい! と私は怒鳴って、通話を切った。
それから5分後。
蝶は隣町に入ってまだ低空飛行で飛んでいた。
するとそこへ再び椎名くんからの電話がきた。
『藤川、まだ蝶は追ってるか⁉︎』
「うん、今、仁科1丁目!」
『良かった。ところで網なんだけどさ、母ちゃんのストッキングでもいい?』
「真面目に探せ!」
今度くだらないことで電話してきたら、もう友達やめよう。
『冗談だよ藤川、そんなに怒るなよ』
電話の向こうの椎名くんが余裕たっぷりにそう言った。
「じゃあ、網が手に入ったの⁉︎」
『任せろ。Amaz●nでポチッた。24時間以内に届く。しかも配送料無料だ』
「私にあと24時間蝶を追わせる気か」
やってらんねえなチクショウ。
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