椎名くんは追いかけない

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「ふんふん。なるほどね。う○この代わりに蝶を置いてきてしまったのね」 「いえ、蝶の代わりにう○こです」  そこはどうでもいいってところまでチーママに説明させられたところで、私はいよいよ本題を切り出した。 「というわけで、そのストールを貸して欲しいんです」 「そう。分かったわ。いいわよ、貸してあげても」 「本当ですか? ありがとうございます!」 「ただし、条件があるわ」  チーママはニヤッと笑った。 「その椎名くんっていうあなたのお友達に、早いとこ好きって告白しちゃいなさい! いつまでも友達のフリしちゃって、こっちはもう、じれじれよ! 末長く爆発しろ、このリア充!」 「は⁉︎」  何でそうなるんだ。私はこのチーママに椎名くんが好きだなんて一言も言ってないのに。 「長いこと生きてるとね、あなたの表情だけで分かるのよ。フフ」 「いや、誤解です」 「オッケー。告白の後の彼からの返事、楽しみにしてる。使ったストールは洗わなくていいから、この店に後で届けてね。咲蔵(さくら)町の料亭、濱口屋(はまぐちや)の隣の栄亭(えいてい)っていう飲み屋よ。よろしく!」 「あ、やっぱり結構です!」  チーママが名刺とストールを渡そうとしてくるのを全力で断り、私は慌てて蝶のところに戻った。  ところが。 「あれっ……いない!」  ここへ来て、蝶を見失う。  辺りを見回し、見つからないから公園を走り回ってみる。(たか)()の上に行っちゃったのか。団地を出ていってしまったのか。影も形もない。  どうしよう。罪悪感が半端ないんだけど!  
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