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第2話 どん底から這い上がる光
「ところで、お嬢ちゃんはリンゴジュースとオレンジジュース、どちらがいいかい?」
「そうだなあ。
リンゴジュースかな」
オーナーは、ガラスのコップにリンゴジュースを注いでくれて、私に渡してくれた。
私は、そのまま飲む。
リンゴジュース。
生まれ故郷のリンゴジュースは、どんな味だったか今となっては記憶が曖昧になってきている。
「お嬢ちゃん、実はうちの子も母親がいなくてね、いつもわしのところに来ていたんだ」
「私は逆ね。
生まれた時から父親がいなくて、母親は私が7つになるかならないかぐらいで、この世を去った。
だから、父親っていうものがわからなくて、母から語る父親を探すことにした」
私の目的は、もうひとつある。
あの憎き殺人犯と化かした元いじめっ子グループから逃げ切ること以外にも、父親探しというのもあった。
母の話によると、私の妊娠がわかったころには、すでに別れていたらしい。
父親がいないことが普通だと思っていたけれど、幼稚園に入ってからはそれが変わっていることに気づくことになるけれど、父親の存在は私の戸籍にも認知されていないし、写真もない。
「探すってことは、父親は生きているってことかい?」
「さあね。
生きているかもしれないし、そうじゃないかもしれない。
母から語られた父親の記憶を元に探している感じだから、現在進行形ではないよね。
母は父と連絡を絶ってしまったみたいで」
「ということは、女手ひとつで育てたということか?」
「そういうこと。
オーナーが、男手ひとつで育てたようにね」
「一応、弟子の協力があったから、正式には一人でということではないかもね。
だけど、お嬢ちゃん、よく一人で頑張ってきたね。
孤児院とかは行かなかったの?」
孤児院とか児童養護施設は、異世界も含めてあるにゃある。
だけど、そんなことしたら、いつ追手がくるとかわからない。
「どんな形であっても、私は一人なの。
孤児院にいたとしても、私といるだけで不幸が舞い降りてくる。
だから、どこにも行き場がなくて、この酒場も、オーナーとの出会いも、これで最初で最後となる。
殺人鬼は、いつどこで襲ってくるのかわからないわ」
「よくわからないけどさ、お嬢ちゃんがどうしても一人で寂しいというのなら、吸血鬼一族の仲間になったり、パートナーを迎えたり、魔法学校に通うとか、人生なんていろいろな選択肢があるんだ。
これしかないって、諦めてないか?
一人では難しいことも、仲間といれば乗り越えられるかもしれない。
お嬢ちゃん、立ち上がってみようか?」
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