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<1・フルートのセシル>
この仕事を受け継ぐ時、父に口が酸っぱくなるほど言われた言葉がある。
『チャド。……必ず、必ず楽団を完成させてくれ。そして、世界を救ってくれ』
この国唯一の、国家認定楽器職人。自分達には、とある使命がある。
何故ならば自分達が作る楽器は、普通の楽器ではない。神様に捧げる曲を奏でる、特別な楽器を作ること。楽器に相応しい奏者を選び出すこと。それらを王様から、直々に命じられているのだから。
この世界は今、危機に瀕している。
多くの天災が町々を襲い、緩やかに滅びに向かおうとしている。
止める方法はただ一つ、この世界を統べる神の心を変えること。音楽によって、この世界の価値を示すことのみ。
『頼む、チャド。私には無理だった。私には才能がなかった。お前にしか頼めない。楽器を、人を見抜く目を持つお前でなければならない』
『……わかったよ、親父』
病床に伏した父の手を握って、チャドが誓ったのは今から十年前のこと。
『必ずや、作ってみせる。この世界を救う、伝説の楽団を』
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