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<6・クラリネットのダイアナⅠ>
「絶対ムリだよおおおおおおおおおおおお!いやあああああああああああああああああああ!!」
楽器店で響き渡る大絶叫。五月蝿え、とチャドは思いながらも放置した。
こっちは楽器作りで忙しい。自分にできない仕事なのだからマーヤがやるしかないのに、何で彼女は理解しないのだろう?確かに多少、いやかなりの無茶振りであることはわかっているが。
「いやいやいやいや!あたいに絶対できるわけない!確実にバレる!この貧乏くさいオーラが滲み出た顔を見てみ!?喋り方聞いてみ!?ムリムリムリムリムリムリ、絶対バレて恥かくだけっ!死んでもごめんだからぁぁぁ!」
「そんなこと言っている場合ですか!」
柱にしがみついて駄々をこねるマーヤの腕を、ぐいぐいと引っ張るのがセシルだ。残念ながら普段から肉体労働で鍛えているマーヤを、彼の細腕で引きずり下ろすのは困難を極めるようだが。
「やると言ったらやるんです!何も授業やテストを受けろと言われてるわけじゃないんですから、腹くくって下さい!私達にしかできないことなんですよ!?」
「そんなこと言われてもおおおおお!うおおおおおおあたいはこの柱と添い遂げる!ここから離れてなるものかぁぁぁぁぁぁぁぁ!!うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!!」
そんなに嫌か。嫌なのか。チャドは深々とため息をついた。
ここまで嫌がるマーヤを見るのは久しぶりかもしれない、なんてことを思いながら。
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