<7・クラリネットのダイアナⅡ>

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 昔から、マーヤは貴族の子女との相性が悪い。かつて裕福な家にこき使われ、奴隷のように扱われていたという経験ゆえかもしれないのでチャドも強くは言えないのだが。  大人の貴族以上に同年代の貴族、特に少女との相性が良くないようだった。何か嫌な思い出でもあるのかもしれない。 「あたしは悪くないわ。クラスのみんなだって悪くない!うちのクラスがオーケストラコンクールに代表で出ることになったから嫉妬してるのよ!」  プンプンと怒るマリー。 「犯人はわかってるわ。隣のクラスのダイアナ・ホーネットよ!ふん、家が子爵だからって調子に乗っちゃって!腹立たしいったらないわ!」 「ダイアナ?何でその人物だとわかる?」 「決まってる。そいつが逃げていくところを、何人もの人が目撃してるんだもの」  マリーいわく。  水をぶっかけられる時、決まってクラリネットの音楽が聞こえて体が動かなくなるそうだ。動かなくなる時間は数秒程度。しかし、硬直しているうちに頭の上から水が降ってきてずぶ濡れにされてしまうというのである。  普通の魔法でないのは明らかだった。はっとして見上げれば、そこにら小さな水の妖精・フロマージュが飛んでいたのだから。つまり、魔法で直接水をぶつけてきているのではなく、音楽で妖精を操ってやらせているというわけなのだ。 「ダイアナ・ホーネットは、ホーネット子爵の長女で……中等部の一年B組に所属する生徒ですの」  困ったような顔で夫人は告げた。 「一年に一度、ルチアーナ学園では国内のオーケストラコンクールに出場するクラスを決めるのですわ。一年生で出られるのは、全五クラスのうちの一クラスのみ。今年は娘のA組が選ばれて、出場することになったのですが……どうやらそこで少しばかり揉めるような出来事があったようで」 「A組が不正で選ばれたって、他のクラスの奴が騒いだのよ!特に、ダイアナは本当に五月蠅かったんだから!」  母の言葉を遮る勢いでマリーは叫ぶ。 「結局、審査は平等だったってことでA組が出ることになったんだけど……それからよ、嫌がらせが始まったのは。ダイアナのやつ、クラリネットで精霊を操ってあたし達を攻撃してるの!でも先生たちはなかなか信じてくれないし、あいつの家がちょっと有名なところだからなかなか学園側も動いてくれなくて!」 「あー……なんとなく、話が読めたぜ」
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