作家への道

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編集者は、俺の原稿を読み終わるとこう言った。 「『3匹の子豚』だね。読ませてもらったよ」 「どうでしたか?」 「兄弟で住んでいる家が違うというのが、現代社会の経済格差を表していてよかったよ」 「経済格差」 「兄なのにわらの家。末っ子がレンガの家。兄としては悔しいだろうね。そういう、心理的な葛藤とかを描いていたらよかったんじゃないかな」 「はぁ」 「最後、弟のレンガの家に三匹で暮らすみたいだけど、その後も、三兄弟でのどろどろの争いとか書くとよかったんじゃないかな」 「いや、仲の良い兄弟という設定なので」 「それじゃ受けないんだよ。例えば、働かない兄が嫌悪されるとか、実は一匹だけ親が違っていたとか、そういう複雑な家庭事情があった方が売れるから」 「複雑な家庭事情」 編集さんが求めているものが何なのか、把握しておかないといけないな…… こうして、またしても俺の原稿は没になった。 俺は、次の出版社へと向かった。
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