道のしるべ

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宴会が終了して、人々が会場から出てきた。無事に高速道路が完成したのを祝って、開通式の前日に工事関係者が宴会を開いたのだ。 さんざんなトラブルに見舞われた今回の事業も、どうやら無事に片付いた。設計担当の僕も一安心だ。 「吉田君、どうだね、これから飲みなおさないか」 部長からのお誘いだ。せっかくだけどお断りする。 「すみません。明日も橋脚を見に行くんで朝が早いんです」 「君は本当にまじめだね。頼もしいけど、時には息を抜きたまえよ」 部長は上機嫌に夜の街へと消えていった。明日の開通式では会社代表の一人として、テープカットすることになっている。 おつきあいしてあげたいけど、部長の二次会は危険だからなあ。必ず風俗店に連れていかれるんだ。僕はそういうのは苦手だ。 「さてこれからどうしようか」 ここは、工事現場から最寄りの繁華街だ。一通りの店はそろっているが、田舎だからどことなくあか抜けない。 しかし、工事が大詰めになってからはずっと近くのホテルに滞在して暇があれば飲み歩いていた。開通式が終われば来ることもないだろう。 「よし、飲んでいくか」 僕は繁華街を歩き始めた。このあたりのめぼしい店は大体知っている・・・はずだった。 「あれ、見慣れない店だな」 『ショットバー・道』と看板だけが出ている。僕は好奇心に任せてドアを開けた。  蝶ネクタイのバーテンダーが一人。カウンターに若い女性客が一人。 「お・・・・」
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