道のしるべ

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「じょ、冗談じゃない。ぼくはまだ・・・」 「あなたがまだ清らかでよかったわ」 たしかにぼくは童貞だ。でもしかし。 「あたしは村で一番かわいい女の子だった。だから選ばれたの。あなたは道の先陣を切った男でしょ。つりあうわ」 「ただの設計技師だよっ」 「男の中で一番だったんでしょ」 「そりゃ工学部では主席だったけど! ぼくはまだ、何も成し遂げてないのに」 「あたしなんか十二歳だったわよ」 ああ・・・何を言っても無駄か・・・。 それに・・・ ぼくは再びテープの向こう側に目をやった。うごめくまがまがしい者たち。あんなもの、こっち側に入れるわけにはいかないよな。 「僕は、その・・修行みたいなことは何もしてないよ」 「大丈夫。あたしと一緒にやりましょう。導いてあげるわ」 彼女はいつの間にか妙齢の女性の姿になっていた。美人だ。こんなきれいな女の人から、何かをお願いされることなんて、僕の人生には二度とないかもしれない。 「ぼくで、役に立てるのなら」 彼女はチラリと下に目をやって、誰かに話しかけた 「いいみたいよ」
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