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(……気にすることなんてないさ。)
俺は、心に渦巻く不安を無理やりに振り払った。
それは昨日のことだった。
柔らかな日差しのせいで、公園のベンチでうつらうつらしている時、俺は不意に声をかけられた。
「振り返るな。そのままで聞いてくれ。」
それは、ちょっとした仕事の話だった。
おそらく昼間に公園にいたことで、俺が今、無職だと推測したのだろう。
確かにそれは間違いではなかった。
俺は一週間程前にバイト先でつまらない諍いを起こし、仕事にあぶれていた。
金はないし、早く次の仕事を探さなければいけないとは思いつつ、どうにも気が乗らずうだうだしているところに奴は現れたんだ。
「どうだ?やるか?」
「は、はい、やります!」
それが、やばいバイトだということはなんとなくわかってはいたが、仕事の内容は簡単だし、バイト料も良い。
それに、俺は奴に身分証を見せてはいない。
教えたのは偽名とメアドだけだ。
大丈夫…絶対に大丈夫だ。
「では、前金だ。」
「あ、ありがとうございます。」
「それと、荷物…言うまでもないが、中は見るなよ。皆、同じものだから、どれを使っても問題ない。」
「は、はい。」
俺は前金と、荷物の入った大きなボストンバッグを受け取ってしまった。
もう後戻りは出来ない。
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