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え? じゃあ、何でそんなに良い奴を邪険にするんだ?だって?
当たり前だろう!
俺はモブになりたいの。分かる?
それなのに、あいつが俺に付き纏うから
「ねぇねぇ、杉原って紬季君と幼馴染みなんだって?」
と、前後左右の女子に声を掛けられまくりな訳だ。
まあ、ことの行先は、陰キャの目玉ない俺を紬季がケツを追い掛け回して居るのを疑問に思い、紬季本人に聞いたんだとか。
するとアイツは爽やかな笑顔を浮かべて
「僕の幼馴染みなんだ」
な~んて答えたもんだから、紬季綾人を狙う女子が鼻息荒く俺に接近して来るのだ。
放っておいて欲しい俺からしたら、本当に迷惑極まりない。
そして紬季綾人自身も、何度突き放しても性懲りも無く俺に付き纏うもんで困っていたのだ。
大体さ、ガキの頃に交わした約束を、ずっと信じている奴なんて居る?
しかも、野郎同士だよ!
俺は、紬季綾人が最後に見せた悲しそうな顔が脳裏をチラついたが、無理やり封印してバイトへと足を運んだ。
バイト先は、駅近くにある本屋さんだ。
まず、店に着いたらエプロンを身に付けて、店内の床をモップで拭く。
(ちなみに、これはこの店のバイト全員がシフトに入る時に必ずやる作業だ)
お陰で、店内の床はいつもピカピカだ。
仕事は主にレジ打ちだが、他には納品された本を出したり、返品する本の伝票を書いて箱詰めする作業が少しある。
バイトは16時~閉店21時までで、帰宅したら婆ちゃんが用意してくれているご飯を食べてから予習復習をして風呂入って寝るというルーティンだ。(あ!自分が食べた食器の後片付けやら、洗濯物を畳んだりするのはやっている)
本屋のバイトは週に3日で、他にもコンビニにもバイトしている。
テスト期間はお休みがもらえるので、本当に助かっている。
学費は稼げないにしても、せめて自分の文具代や参考書代はバイトで賄いたいのだ。
だから、俺には恋愛なんてしている余裕なんて無い。
しかも……だ。
万が一、万が一にも俺が紬季を好きになったとしても、アイツが望む関係には絶対になれない。
だって、これ以上母さんに肩身の狭い思いをさせるのだけは絶対に嫌なんだ。
クソ親父のせいで、ただでさえ肩身の狭い思いをさせているのに、俺まで母さんに辛い思いをさせたくなかった。
だから俺は、誰かを好きになるとかそういう感情も必要無いと思って生きて来た。
俺自身も、あのクソ親父の血を引いているから、その時に好きになったとしても……裏切ってしまうんじゃ無いのかと怖かったというのもある。
だから、俺は一人で生きていくんだと……小学校一年のあの日に決意をして生きてきたんだ。
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