夏祭り

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「だから反対したんだ!」 爺ちゃんと婆ちゃんは、突然やって来た俺達に驚いてはいたが、温かく迎え入れてくれた。 でも、寝静まった夜中。 トイレに行こうと歩いていると、リビングから爺ちゃんの怒鳴り声が聞こえてそっと様子を見に行った。 泣き崩れる母さんと、そんな母さんを抱き締めて優しく背中を撫でる婆ちゃん。 そんな母さんに、顔を真っ赤にして怒る爺ちゃんの姿が見えた。 「まさか、新太にまであんな酷い事をしていたなんて……。それに気付かなかったなんて、母親失格だわ」 「芸人なんかと結婚したからだ、馬鹿者!」 母さんが、俺のせいで泣いてる。 俺のせいで爺ちゃんに怒られてる。 いつも笑顔の母さんの涙は、幼かった俺の心に深い傷を作った。 全部、親父と家族になったからだ。 俺が生まれなければ、母さんは泣かなかったかもしれない。 そう思ったんだ。 この後、ドロ沼の離婚裁判を経て、俺は綿貫新太から杉原新太に名前が変わった。 親父は離婚に応じず、離婚するなら慰謝料を払えと言って来たらしい。 俺は母さんと隣町にある爺ちゃん家に引越し、転校と同時に「杉原」と苗字が変わった。 この日から、俺は夏祭りが大嫌いになった。
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