世界一嫌いな男、紬季綾人

2/4
前へ
/51ページ
次へ
 紬季綾人とは、高校受験の日に出会った。 「あれ? もしかして綿貫新太君?」 突然、思い出したくもない苗字でフルネームを呼ばれ、思わず眉間に皺を寄せながら振り向いてしまった自分にイライラしていると、スラリとした長身にキラキラと眩い光を集めて近付くイケメンが居た。 いかにも陽キャの、人生勝ち組っていうイケメンの顔を見ながら 「誰?」 と呟くと 「やっぱり綿貫か! 久しぶりだな!」 そう言ってそいつは突然、俺に抱き着いて来たのだ。 フワリと香る爽やかなコロンの香りと、スポーツか何かをしているのだろうか? 鍛え上げられた逞しい身体をしていて、天は二物も三物も与えるんだなぁ~と、妙に関心してしまった。 「あの……誰?」 戸惑いながら聞くと 「僕だよ、紬季綾人だよ!」 そう言われて、記憶が一気に甦って来た。 紬季綾人は俺の初恋の人で、俺の人生最大の汚点である。 紬季とは、幼稚園から転校するまで小学校が一緒だった。 当時の紬季は、髪の毛が肩まであってクラスで一番小さかった。 しかも子供だったから、「つむぎあやと」を「つむぎあやこ」と聞き間違えしてしまい、しかも当初はとてつもなく美少女にしか見えなかった美少年だったで、俺はずっと女の子だと思っていた。 泣き虫で身体が弱かった「あやちゃん」は、俺の大好きな女の子だった。 いつもガキ大将にいじめらていて、その度に俺があやちゃんのナイトの如く助けていた。 「あらたくん、ありがとう」 泣きながら俺を見上げるあやちゃんは、まさに天使の如き美少女だったんだよ! そして俺は、テレビで見たプロポーズの真似事で 「あやちゃん、結婚して下さい」 と、四葉のクローバーで作った指輪をあやちゃんの薬指にはめたんだ。 あやちゃんは驚いた顔をして俺を見ると 「結婚てなあに?」 そう聴いてきた。 「お父さんとお母さんになることだよ」 「お父さんとお母さん?」 「そう。ずっと一緒に居る事だよ」 俺の言葉に、あやちゃんは嬉しそうに微笑むと 「あや、あらた君とずっと一緒に居たい」 って、それはそれは可愛い笑顔を浮かべたんだ。 「じゃあ、チューしても良い?」 「チュー? どうして?」 「チューは、ずっと一緒に居る為に必要なんだよ」 俺の言葉に、純粋なあやちゃんは笑顔を浮かべ 「わかった」 そう言って、辺り一面がシロツメクサの花が咲く公園で、俺はあやちゃん……。 幼少期とはいえ、そう、キラキラ王子の紬季綾人とキスをしてしまったのだ。 俺達はことある事にキスをしまくり、幼稚園の先生に 「あやちゃんとあらた君は、男の子同士だから結婚は難しいかなぁ~?」 と言われて 「え?あやちゃん、男の子なの?」 そこで俺は、衝撃の事実を知ったのだ。
/51ページ

最初のコメントを投稿しよう!

97人が本棚に入れています
本棚に追加