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大学卒業後、中堅商社に1年務めたが人間関係がうまくいかず、辞めた。その後派遣会社で半年働いたが気力が続かず、以降引きこもり生活18年。
ある夜、両親が部屋に来た。妹が結婚することになった。この家を売却し、マンションを買う。妹夫婦と私たちはそこに移るが、お前の部屋はない。
おれは家を出てアパート住まいを始めた。両親は引っ越し代とアパートの初期費用だけは出してくれた。生活のため再び派遣会社に登録したが、大卒とはいえ18年引きこもってた中年男に条件のよい仕事はなかった。
だがとにかく時給900円のパン製造の仕事にありついた。月給換算で手取りは10万ちょっとだ。最初はパン生地を成形する部署に配属された。しかし間もなく主任がきて言った。
「仕分けの人出が足りないのでそちらに移ってもらえますか」
人生、何があるかわからない。おれは家を出て初めて金のありがたさ、貯金を意識しはじめた。家族には縁を切られたも同然で、頼れない。生活のためすべてをぎりぎりに切り詰めた。風呂なし2万のアパート。風呂は近くの銭湯に2日に1回。1000円の床屋に行く回数さえ、3ヶ月に1回だったのを半年に1回に減らした。
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