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粗末な服装、髪も伸び気味なのを不潔に思われてしまったらしい。長年友人もいないので自分ではおかしさに気づかなかった。おれはだまって仕分けに移った。
そのうちコロナ渦で出勤日が減らされてしまい、生活はますます苦しくなった。そこで運送会社の配達バイトも始めたが、腰を悪くしてすぐ辞めた。パン工場の仕分けでも商品の入った段ボールを何度も運ぶのだが、これが腰痛にこたえ、辛かった。
それでも解雇はされなかったのをありがたく思っていたのが、昨今の物価高騰だ。パンはいの一番に値上げ対象になり、戦々恐々としていたところ主任に呼ばれた。
「申し訳ありませんが、契約は今月限りとさせていただきます」
おれは猛暑のなか、県道を歩いていた。仕事を探す気力はすっかり失せていた。30分ほど行ったところを新幹線の駅がある。新幹線なら一発で確実に逝かせてくれるだろう。在来線の快速でもよかったが、ただの快速なら貧乏人も乗っている。
職場に電車通いしていたころ、人身事故には本当に迷惑した。人身事故で遅刻してもその分の金は支給されないのだ。それがどれだけ貧乏人には辛いか。
貧乏人に迷惑はかけたくない。新幹線なら、ことにのぞみなら、乗っているのは比較的裕福なやつらだろう。やつらが困るのはまったく問題ない。のぞみが通過するのを待って、飛び込むのだ。
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