お盆

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「お父さん?」 「おぅマサヒコか。俺だ俺だ」 「あら、あなた? お久しぶりねぇ」  必勝の美女からマサヒコの母が反応した。 「その声はタマか。まさかこんなところで会えるとはな」 「そうですよ……。あなたより先にこっちに来て待ってるのに、全然会いに来てくれないんだもの」 「いやぁ。それがおめぇよぉ……。三途の川を渡ってからが人がメチャクチャごった返してて、あんなに混んでるのは昔行った初詣のとき以来だ。だーから迷子んなっちゃってな、人の流れに任せて歩いたもんだから、どこ歩いてんだかさーっぱり……」 「もういいわよ。相変わらず言い訳がましいったら」 「言い訳じゃねぇよ。ホントだよ、なぁマサヒコ?」 「は? 俺に聞いたって知らないって。俺はまだあの世を渡ってないんだから」 「やだ、お義父さん。勝手に連れていったりしないでくださいよ?」 「その声はアサコさんかーー。俺はそんなことしねぇよ。マサヒコは百まで生きて現世でいっぱい苦労したほうがいいんだ」  昔の団欒風景が蘇る。
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