お盆

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「美味しそうね。これアサコが作ったの?」  実母が会話に入ると、アサコは突如溢れんばかりの涙を流した。 「おぃおぃ。何泣いてんだよ」 「うっうっう……。お母さん」  久々に聞いた母の声。懐かしく優しい声に、アサコは胸がつまって言葉にならなかった。 「やぁね、アサコったら。お話しましょうよ。時間がもったいないじゃない」  母の言葉にうんうんと頷くばかりのアサコは、目も鼻も真っ赤に染まる。  でももちろん嬉しいのはアサコばかりじゃない。ここにいる誰もが、切り取られた空白の時間を埋め戻そうと、僅かな時間に夢を描いた。  
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