ラストスパート

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ラストスパート

 ここに二つのグループが出来上がり、バラの話題グループ、隣近所の話題グループに分かれた。マサヒコらはいつのまにかマネキンに話しかけていることに、違和感がなくなっていた。    パッと残り一分の表示がつく。  全員が一気に現実に引き戻される。残された時間に親子の会話はただただ慌ただしく、思いつく言葉をランプが消える寸前まで投げかけた。 「お母さん、また来てね。今度はお父さんも呼ぶから」 「アサコも体に気をつけるんだよ」 「タマ。ユキヤナギがある公園知ってるか? 俺は大抵あそこにいるからよ」 「あら。案外近くにいたのね」 「親父。人数の加減で次のお彼岸のときは呼ばないからな」 「ばあちゃん。俺数学のテストで満点取ったんだよ!」 「アサコさんのお母さんも、公園でお会いましょうよ」 「マサヒコー。何で俺を呼ばないんだ。カネは相続で残してやったろう」 「ねぇ……ばあち」 プーッ、プーッ、プー。 ーーマサシは誰からも聞いてもらえなかった。
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