喋るマネキン

5/5
前へ
/21ページ
次へ
 ふうぅぅーーっ。 「何だよ。三人でため息かよ」 「やぁ、何か緊張したぁ」 「ほんとほんと。マジやばい」  野村はそう言ってマネキンを取り、下から覗いたり頭を撫でたりして頭の重みを味わう。 「でも面白かったな、お前のじいちゃん」 「そう?」 「話し方とか昔話に出てきそうな感じでさ」 「あーわかるわかる。何かこう、あったかい感じがした。マサシも嬉しかったろ」 「うん、久々だしな。ってか、話せるってわかってたとはいえ、実際にやってみるまで半信半疑だった。亡くなった人とホントに会話するなんてさ。やっぱ時代なんだねー」 「わー。じいちゃんと同じこと言ってる〜」 「ジジくせぇ〜」  わっはっはっは……。  この時代ーー。世の中の進化がめざましく、AIとの共同開発で目新しいものをドンドンと創りあげた。そのひとつが今回のこの親類縁者と繋がる『リメンバー35』復活作戦。通称R35。  血縁関係にある者ならば『R35』に故人を呼び寄せることが出来、会話が出来る人気商品。Rとはリメンバーを意味し、35とは亡くなって35年以内の人と話せるということを表す。日常の風景のなかに、多色彩の光が差す。  人類の進歩はあの世にまでも、突き抜けた。
/21ページ

最初のコメントを投稿しよう!

10人が本棚に入れています
本棚に追加