西暦2501年

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「アサコさん、休憩?」 「はい。今日はお客さん少なめですね」 「あぁそうね。週の半ばってそんなもんよ」    そう返したものの、梶村の目は報道番組に釘付けだ。アサコは空気を読んで静かにテレビに目をやると、番組MCが何かを語っている。 「びっくりですよねー。僕もこの間、十年前に亡くなった奥さんを呼びだしてみたんですよ」  どうやらR35の話のようだ。 「そしたらぁ、奥さんはその当時のまーんま。『お久しぶり〜』なんて若い声出しちゃって、何か僕だけ歳くったようなジジくさい感じがしたんですよねッ」 「まぁ十年も経てばそうなりますよ」 「亡くなってから、あっちの人ってその先の十年間はどう見えてるんですか?」 「そこなんですよ!」  MCは人差し指を立てて目を丸くした。 「僕は、どうせ上から見下ろして何もかもお見通しなんだろう? って思ってたわけですよ。 それがね、何も見えないし知らないんだって。僕がこの十年、再婚したとかしてないとかって何も知らないんだって。ビックリでしょ。  彼女が言うにはね、誰でも見える自由席みたいなもんはあの世にはないし、何をするにも順番があって、守らないと大変だって言うから、そんな厳しいところなのかと逆に聞いてみたんですよ……」 「そしたら?」  注目のされ方が、もはやホラー映画を観てるみたいに、誰もが次のドキドキを待っていた。 「規則を破ると、凄いらしい……」  MCは首を引っ込めるようにして、目をキョロキョロさせて緊張の表情を作った。  
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