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ルンルン気分。これからバスケだぁ。
「本当にバスケバカだな、樹は」
と、呆れ返っているのは、伊田灯だ。俺と同じく3年だ。
「勉強にもそのくらい意欲があればいいんだけど」
美香は灯の言葉にため息をついた。
「まあ、樹らしいといえば樹らしいけどな」
2年になった原智樹がバッシュの紐を縛りながら、フッと笑っていた。
悪かったなぁ。さっきから、聞こえないように言ってるつもりかもしれないけれど、聞こえてるぞ。
「樹の場合は、できないんじゃなくて、やらないからできないんだよな」
同じく2年の木野拓斗が遠い目で、俺を見ている。
「すごい、言われてますけど……」
2年の中山ディーノス快が俺を励まそうとしているのか、言葉に迷っている。
無理に言葉を探さなくてもいいって。
あれ? 俺っていじられ役?
城伯高校のバスケ部は、上下の関係がなくて、友達感覚で接している。
だから、先輩とも言わない。親しみを込めて、皆、下の名前で呼び合っている。
今度、1年生が新たに入部してくるときも、そう伝えようと考えている。
まぁ、それはいいとして、とりあえず、全員揃ったから、トレーニング開始だ。
まずは、慧のイップスがきっかけでメンタルトレーニングから始まる。
「今日から、イメージトレーニングもしていこうか」
声をかけたのは、バスケ部顧問の高宮義孝コーチ。
「まあ、イメージっていうと、頭の中で映像化させるんだけど、頭で言語化しても勝手に潜在意識で映像化してくれるから大丈夫」
高宮コーチはイメージトレーニングの説明をしてくれた。
今、叶えたい理想を言語化する。そのときに既に叶っているかのように現在進行形で使うことが重要だとか。
ゆっくりと10回唱えて、最後は感謝の気持ちを述べて、今日、よかったことを褒める。
感謝は日頃、高宮コーチに言われてきたこと。褒めることに関しては、慧のイップスがあってから、よかったことを褒めていくということをトレーニング化した。
これで、少しずつ、慧も克服しているような気がする。
まぁ、まだ、本人はどう思っているのか、わからないけれど。
メンタルトレーニングが終わると、バスケの練習開始。
フットワーク、ドリブル練習、シュート練習で基礎練習をしっかり行う。
そして、実践練習。
高宮コーチと美香も加わり、5対5での練習中。
慧にボールがきた。リングを見る。
シュートは出来そうだけど。
慧は3度、フェイクをいれて、シュート、パス、ドリブルと見せかけ、最後はゴール下のシュートをする。
シュートをする瞬間、一時的に足が震えて、止まったことを俺は見ていた。
慧はそれでも、ゴール下のシュートを入れてみせた。
「よし、今のよかった! ディフェンスを惑わせてのシュート!」
真っ先に俺は、慧に声をかけて褒めた。
慧は恥ずかしそうにしていたが、今までシュートさえ打てなかっただけに、なんだか俺まで嬉しくなった。
達也、灯、貴、智樹、拓斗、快も慧のところに寄ってきて、抱き合っていた。
「やったー! 凄いよ! 慧」
皆で喜んで、慧はちょっと戸惑っていたみたいだが、その姿も可愛く思えた。
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