1幕 新チーム

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 俺は灯の指摘に腿の力みをとるために、脱力を意識するが、全然脱力ができなくて、マッサージしてみた。それでも、力みはとれない。  それよりも、マッサージして気づいたことがあるが、腿が張っている感じがする。  あれ? いつも、ケアしているつもりができていないのか。 「しっかりケアしていても、ケアをしているときに力んでいたら、意味ないぞ。ちょっと、腿をブラブラさせてみな」  高宮コーチのアドバイスに、俺は即座に腿をブラブラさせた。 「ポイントは柔らかくしなやかに。この使い方を覚えるためにブラブラさせるんだ。簡単にいうと、腹芸を思い出してみな」  高宮コーチは、俺たちにわかりやすいように例えてくれた。 「腹芸ってクネクネ動かしているけれど、しなやかで柔らかいだろ? あれも脱力のトレーニングになるんだぞ。そのイメージで体全体をブラブラさせる」  なるほど。俺は足を浮かせて、腿をブラブラと動かしていく。力が抜けていくような感じがして、目を輝かせた。  そう、これだ! 力みがない状態。初めて、脱力ということが分かった気がする。 「そう、力みがないということは、体がしなやかであること」  高宮コーチはニカッと笑った。 「へぇ、脱力できないときは、ブラブラさせると良いんだ」  達也が手足をブラブラさせて力みをとっていく。 「おぉ、この感覚が力みをとるってことか」  達也も脱力を実感していた。  改めて思うけれど、脱力って大事だよな。力みをとってから、フットワークをすると、スムーズで動きが速くなったことに俺は驚いた。  あとは呼吸がちゃんとで理解できれば、もっと良くなりそうなんだけどな。  バスケのテクニックというよりも脱力や呼吸はもっと大事で、これができないと技術も上達しない。あらゆるところから、トレーニングをしなければならない。  バスケもいろんなことを考えると、奥が深いな。ただ、バスケだけやっているだけじゃ、なかなか勝つことも技術をアップさせることも難しい。でも、これが面白いところなんだろうな。  俺たちは練習を終えて、スポーツセンターを後にした。明日からは、新1年生の入部募集を開始する。  1年生、入ってくるかな。入ってくれたら、試合形式の練習がたくさんできるよ。 「じゃあ、明日な」  俺は手を挙げて合図する。皆、それぞれの家へと帰っていく。  ひとりになると、俺は何気なくスマホを確認する。兄ちゃんからラインがきている。なんだろう? 兄ちゃんからだ。  ラインを見てみて、俺はびっくりした。兄ちゃん、NBAのドラフトにアーリーエントリーする気なんだ。凄い。  NBAのアーリーエントリーとは、ドラフト候補ではない選手とプロ契約ができる制度。その制度を利用してNBAと契約しようと考えているんだ。兄ちゃんは。  俺は兄ちゃんを誇りに思う。  
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