1幕 新チーム

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 今日から新1年生が部活見学にやってくる。入部希望があれば、すぐに入部も可能だ。ただ、1週間は仮入部。溢れてしまったら、入部を断ることもある。  コーチが見られないからというのが理由らしい。高宮コーチはどう考えるんだろう。とにかく楽しみだな。  とりあえず、今日から少しずつ授業も始まるので、ちゃんと勉強しよう。また、バスケができなくなると嫌だからな。  授業はまだ午前中まで。午後からは部活だ。でも、部活前に腹ごしらえはしっかりしないとな。  授業が終わると、学食へと急ぐ。さっさとお昼ごはんを食べ、猛ダッシュで体育館へ行く。  早くもシュート練習をする。  あっ、食べて、すぐは運動しちゃダメなんだっけ。消化し切れてないときに運動したら、逆流するとかなんとか。  良い子の皆は真似しないでくれよな。本来は食べた後は、2時間は置かないとダメらしいけど。 わかっていても、早くやりたくなり、結局、休ませることなく1対1を想定した練習を始めた。  それは俺だけ。他のメンバーはゆっくりご飯を食べて、体を休ませる。  まだ、誰も来ていないから、体育館にドリブルする音だけが響き渡っていた。  感覚としては腕が力んでいるような気がするな。  俺は昨日、高宮コーチに言われたように、力みをとるためにブラブラさせた。  よし、これでもう一度。  少し力みが取れてきたかな。  しばらく練習していると、ようやくメンバーが体育館に集まってきた。 「てか、おまえ、早いな」  達也がやってきた。 「本当にバスケをやるときだけは早いな」  達也に続き、貴が呆れ顔でやってきた。  俺は、毎回そんなこと言われているので、達也と貴の言葉をスルーした。  それでも、仲が悪くなることはない。それは、それぞれがリスペクトしているし、自ら考えて行動できるからだ。  だから、このチームが強くなれるように、俺もきちんとプレーを動かさないと。  そんなことを考えながら、シュート練習をしていると、全員が揃った。ここから本格的な練習が始まる。  試合形式の練習中、ボールをキャッチしようとした俺は、体が支え切れず、バランスを崩した。  なんとか踏ん張ったけど、体幹が弱いな。もっとプランクをやったほうがいいかな。  プランクはうつ伏せのから、肘とつま先だけで体を持ち上げてキープした状態。  地味にきついけれど、体幹の基本トレーニングだ。  それを見ていた高宮コーチは、練習後に体幹のことについて話してくれた。 「靴下履いてると、やりにくいから裸足になってやるのが1番良いけど」  高宮コーチの前置きがあってから、説明する。 「足の指でしっかり床を押さないと、バランス崩した時に倒れてしまう」  ここで、高宮コーチはチェックしてみようと、2人1組になるように指示した。  用意したのはメモ用紙。そのメモ用紙を1枚切り取る。  1人はただ立つだけ。もう1人は立っている人の足の指にこのメモ用紙を入れる。 「メモ用紙が指と床との間に入ってしまったら、浮指といって、しっかり指が床に密着していないことになる」  高宮コーチは、ゆっくりと説明した後に俺たちに問う。 「床に足指が密着していないということは、どういうことだかわかるか?」 「床からの反発での力が出ないから、ジャンプも踏ん張りも弱くなる」  俺はすぐに答えた。実際にやりながら。 「その通り。床の反発を利用して、ジャンプや踏ん張り、走る、歩くなどをしているけど、足指を使うことができないと、床の反発が利用できないんだ」  高宮コーチはニヤリと笑う。  そのとき、バスケ部を見学しにきた1年生がひとり、じっと練習を見ていたことに気がつく。 「興味あるか?」  高宮コーチは1年生に声をかけて、招き入れた。 「ちょうど、見学にも来てくれたことだし、皆で試してみたいことがある」  高宮コーチは笑顔を見せたまま、やり方を説明する。  試したいことってなんだろう?
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