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「次に、お兄さんはいちど経験しといたほうがいい。人間って、未知の領域に踏み込む勇気にすごい覚悟が要るもんね。見たり触ったり挿れてみたりして女を知って、男になろうよ」
「なんでそう思うんだよ」
それにはね、ちゃんと理由があるんだよ。
「私たちが最初に出会ったときの会話が理由かな。お兄さん、私の考えが正しければ、あの合コンは周りの人たち一切悪気が無かったよ。むしろお兄さんが次会ったときに謝ったほうがいいんじゃないかって思うくらい」
「なんだよそれ」
「それに気付かない鈍いところはお兄さんのダメなとこだよ。ま、いいや、最後の理由。
女の子は、無条件に自分を守ってくれる男のことを好きになるの」
私は抱き締められた体勢のまま、お兄さんの両眼を見つめた。お兄さんは、顔を真っ赤にさせていた。
「ダ、ダメだよ。そんなことしたら犯罪だよ」
もう遅いよ。
「お兄さん、実はもうすでに未成年誘拐罪だからね。一泊以上してるから、もしかしたら監禁罪もかな」
「あんな仕事してたから、その辺の法律は自分なりには勉強してたんだよね。法律って、女子供にすごく有利にできてるんだ。その裁量は、女の子側がどう思ったかで決まるの」
私はお兄さんの青ざめた顔の唇に、そっと自分の唇を重ねた。
「安心できないと勃たないからってS着希望のお客さんも居たからさ、ゴムもちゃんと持ち歩いてる。お兄さんもそっち派でしょ?」
私はそっとお兄さんの腕を解き、リュックからゴムを取り出した。
「お兄さん、『毒を食らわば皿まで』だよ。気持ちよく男になりたい? それとも、女の子に恥をかかせて逮捕されたい?」
お兄さんは、得体の知れないモノを見る目で何度も何度も頷いた。決まりだね。
「お兄さんは、服を脱いでベッドで寝てるだけでいいよ。最初は全部してあげる」
お兄さんは、最初こそしなびて縮こまってたけれど、舐めてあげたらみるみる元気になっていった。
そういえば私は私で若い男は今日が初めてだったけど、若いとこんなに硬くなるんだね。不覚にも、奥に当たって達しちゃった。
「お兄さん、卒業おめでとう。次はお兄さんが責めてみてよ」
一回出させて落ち着かせたあと、今度は私が仰向けに寝て全身を好きにさせてあげた。お兄さんは揉んだり吸ったり指を入れたりしているうちにまた元の大きさを取り戻して、一心不乱に腰を振ってあっという間にまた果てた。
「お兄さん、気持ちよかったよ。そこは自信を持っていい。けど、ひとつ覚えといて。女の子が濡れるかどうかは、行為に及ぶまえに決まるものなんだ。調子に乗って幻滅されたりしないように、気をつけてね」
終わったあとの、出すだけ出して冷静になった男の顔が私は嫌い。でも、脇の下に潜りこむと優しく包む筋肉質な腕は好き。私はお兄さんのバツの悪そうな表情の頬に口づけて、腕のなかで眠りについた。
「おい!! 開けろ!!! 警察を呼ばれてーのか!!!」
呼び鈴を何度も鳴らされ、ドアの向こうで野太い声でがなられた。
「お兄さん、お邪魔しますくらい言わないとお兄さんが住居不法侵入だよ」
「んだよクソガキってかマジで居やがった。話が長くなりそーだなー!」
お兄さんがドアを開けたら髭面の男がつかつかと部屋に入ってきて、私たちは睨み合った。
「おまえ噂になってんだよ。部屋を年端も行かない女の子が出入りしてるってな」
「これには事情と理由があるんだ」
「ならきっちりとそれを説明してみろや! セッティングしてやった合コンをバックレやがった理由も含めて、俺たちが納得できるようにな!」
髭面の男は部屋の真ん中にどっかりと腰を下ろした。
「……。この子は、この歳で帰る場所もなくホームレスやってるんだって。それで、仕方なく居候させてる」
「それ自体かなりキナ臭い話だが、問題はそこじゃ無ぇ。おまえ、よく女とネンゴロしてんのに合コンに顔出せたもんだな? え?」
――若さだね。せっかく話が通じそうなのに、そんなガラの悪い口調じゃお兄さんが悪者にされちゃうよ。
「その合コンってさ、先日繁華街の居酒屋でやってたりした?」
「あ? ガキがしゃしゃってんじゃねーぞ?」
「口出しして何が悪いの? 私にも関係のある話だよね? このお兄さん、その日店の真向かいの街路樹に八つ当たりしててさ、私から声をかけたんだよね」
オモテの世界の住人にどれだけの剣幕で凄まれてもさ、ちっとも怖いと思えないんだよ、残念ながら。
「このお兄さん、下手したらそれこそ通報されてたよ」
「……、そうかよ。こいつも、一応筋は通してたんだな」
髭面の男は台所の換気扇を回し、その下で加熱式タバコを吸いだした。
「だが、あいつも可哀想にな。同じゼミになって一年、どれだけモーションかけても気にかけてくれないって言ってたからあの日俺たちがひと肌脱いでやったんだよ」
「それなのにさ。いくらなんでも、その歳はマズいんじゃないのか? いろいろと。どう報告したらいいか考えると頭が痛いよ」
髭面の男は吸い終えたカートリッジを携帯灰皿に入れ、換気扇のスイッチを切った。
「どうマズいの? お兄さん」
私は髭面の男に詰め寄った。
「どうって……。ひとつふたつなんてもんじゃないが、ロリコンが大手を振って歩けるような世の中じゃないのがいちばんだろ」
「ふーん」
私は男のズボンのジッパーを下ろし、なかのモノを取り出し咥えた。
「おい! なにしてんだ! やめろ!」
「やめない。あ、そうそう。もし力ずくで引き剥がそうとして私がケガなんかしちゃったら、お兄さんは未成年暴行傷害だからね」
邪魔だから、ベルトを緩めて衣服をまとめてずり下げた。
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