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必ずしも食えるとは限らない仕事に就くなんて、愚かな選択だと思っていた。堅物の父と母の教育のお陰で、私はこうして、安定した公務員の仕事に精を出すことができている。
本当に精を出しているだろうか。私が本当にやりたかったことは……。
夢で聞いたあの歌を、楽譜に書き起こす。学生時代から長年触っていなかったアコースティックギターを握り、うろ覚えの歌詞と、オリジナルの歌詞を乗せる。
その時初めて、頭の中を駆け巡っていたあの歌が、色を持って私の心を揺さぶって来るように感じた。
顔や名前は出さずに、SNSにアップしてからは早かった。あっという間に拡散されて、様々な人が口ずさみ、踊った。
代表曲はその歌になったが、その後私自身が書き上げた歌も、芋づる式に話題になっていく。
私は公務員を辞め、憧れだったミュージシャンになった。
多くの番組に引っ張りだこ。今まで画面の向こう側にしかいなかった憧れの人に歌を聴いてもらったり、時には共にセッションをしたりすることもあった。
世界のどこにいても、私の歌が響いている。
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