イヤーワーム

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 その日は、レコーディングが予定の時間よりかかってしまった。あんまり楽しくて、ついついアレンジで盛り上がってしまったのだ。  駅に着いたはいいものの、既に終電が出た後だった。私は駅前に停まっていたタクシーに乗り込んだ。  行先を告げ、すぐに走り出すタクシー。私は流れる景色を横目に、ふと、あの日夢の中で聞いた歌を口ずさんでいた。 「流行ってますよね、それ」  運転手が言った。ちらりとルームミラーに目をやった彼は、続けて言った。 「やっぱり。テレビで見たことありますよ。あなた、歌手の柳島さんでしょう?」  私はついはにかんだ。 「それ、あなたが最初に出した歌ですよね。知ってますよ」 「ええ……実は、あの歌は夢の中で聞いたもので」  窓の外を見ると、あの夢で見た景色と、どこか似ているような気がした。 「終電を逃して、停まっていたタクシーに転がりこんだら、先に男の人が乗っていて。その人が口ずさんでいたんですよ。まるで、こんな今日みたいな……」 「次はあなたの番ですよ」
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