冬空の下で

1/2
前へ
/89ページ
次へ

冬空の下で

「寒いな~、平、風邪ひかないように  しっかり着込めよ」と堀江が言った。 「しかし、本場は寒いな~」と堀江。 「本当ですね。寒すぎる」と舞華 「でも、超ラッキーだったよな。  すい星が太陽の前を横切る 『太陽面通過』という現象が  観られて」 「そうですね、  地球と太陽の間にすい星が並ぶことは  珍しく、100年に13回程しか  観れない貴重な天体ショーですものね」 「そうだよ。その現象が観れるのは、数日後  世界各国から、天文学関係者が集まるこの場にワーズ教授が俺ら観測所スタッフを  連れて来て下さるなんてな。俺らの研修期間終了へのはなむけだよきっと」  と堀江が言った。  夜空を見上げた堀江、 「そういえば、今夜は満月だな。時間的に   オーロラも観れるんじゃないな?」 「そうなんですか。楽しみだな~」  と言うと舞華も夜空を見上げた。 「あ……俺、そろそろ先に部屋の中に戻るから  あんまり、夜空ばかり観てると風邪ひくから  ほどほどにな……」  と言うと堀江は建物の中に 入って行った。  首元に巻かれた真っ白いマフラー   舞華はかじかむ手を口元に当て、  白い息を吐きながら真冬の夜空を見上げる。  アラスカの夜空に浮かぶ月。 「満月だ……」と一言呟いた。 カシャ カシャ カシャ  とシャッターを切る音が響き渡る。 舞華が横を向いた。 そして……驚いた。 「凌空……」 そこには、カメラを片手に持った凌空が 立っていた。
/89ページ

最初のコメントを投稿しよう!

120人が本棚に入れています
本棚に追加