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冬空の下で
「寒いな~、平、風邪ひかないように
しっかり着込めよ」と堀江が言った。
「しかし、本場は寒いな~」と堀江。
「本当ですね。寒すぎる」と舞華
「でも、超ラッキーだったよな。
すい星が太陽の前を横切る
『太陽面通過』という現象が
観られて」
「そうですね、
地球と太陽の間にすい星が並ぶことは
珍しく、100年に13回程しか
観れない貴重な天体ショーですものね」
「そうだよ。その現象が観れるのは、数日後
世界各国から、天文学関係者が集まるこの場にワーズ教授が俺ら観測所スタッフを
連れて来て下さるなんてな。俺らの研修期間終了へのはなむけだよきっと」
と堀江が言った。
夜空を見上げた堀江、
「そういえば、今夜は満月だな。時間的に
オーロラも観れるんじゃないな?」
「そうなんですか。楽しみだな~」
と言うと舞華も夜空を見上げた。
「あ……俺、そろそろ先に部屋の中に戻るから
あんまり、夜空ばかり観てると風邪ひくから
ほどほどにな……」
と言うと堀江は建物の中に 入って行った。
首元に巻かれた真っ白いマフラー
舞華はかじかむ手を口元に当て、
白い息を吐きながら真冬の夜空を見上げる。
アラスカの夜空に浮かぶ月。
「満月だ……」と一言呟いた。
カシャ カシャ カシャ
とシャッターを切る音が響き渡る。
舞華が横を向いた。
そして……驚いた。
「凌空……」
そこには、カメラを片手に持った凌空が
立っていた。
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