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月のひかり
季節は春を迎えた。
ここは、都内某所のビル内、
沢山の花が飾られたフロアに凌空が立っていた。
「凌空、おめでとう」と洋二が言った。
「来てくれたんだ。洋二ありがとう」
「当然だろ?
凌空、おまえの記念すべき日だぞ、
さっき、おじさんとおばさんにも会ったぞ。
記者に囲まれてた」
「そうか」と凌空が微笑んだ。
「しかし、おまえは凄いよな、
大学の教授が言ってたぞ。
工芸大学 芸術学部 写真学科始まって
以来の快挙だそうだ。
何と言っても、あの有名な写真家
クリス・ローズに在学中に見込まれて
直接指導を受けれるなんて。
それに、この若さで、個展まで
開催出来るまで有名になってさ」
「俺自身も、奇跡だと思うよ。
大学の時、たまたま入った写真展で、
クリス先生の写真に目が留まって、
衝撃を受けた。
その場から離れられなくなってさ。
その時、偶然クリス先生から声を
かけられたんだ。
俺が、天体のこと詳しかったから、
先生も色んな話をしてくれて、
その時、俺、将来はこの仕事につきたい
と思ったんだ。夢を見つけた瞬間だった」
白い壁に飾られた沢山の美しく、
光を放つ天体写真の数々……
凌空は、星・月・惑星等を専門に写真に収める
『天体写真家』になっていた。
コツ、コツ、コツ、ヒールの音がした。
凌空と洋二が音のする方を見ると、
花束を抱えた舞華が二人の目の前に歩いて来た。
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