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〈挫折派遣センター〉をご存知だろうか?人間の人生に挫折を派遣する、重要な役割を担っている我々を知る人間はおそらくいないだろう。いや、勘の良い人間ならもしかしたら気付いているかもしれない。しかし気付いたところで、我々の存在を感じる事ができるだけで、姿として捉える事は不可能だ。
「今まで頑張ってきたのに、何でここで挫折してしまうんだ!」
「私の人生、挫折ばっかり……もう挫折なんてたくさんよ!」
「神様は何故私にばかり挫折をさせるのか。そんなに私が憎いのか……」
派遣先で人間達は、大体このような言葉を口に出す。その人間に必要だから来てやったのに、一度も感謝をされないばかりか、邪険にされ、暴言を吐かれた。
〈人間を幸せにする仕事です〉
そんな広告に惹かれ、挫折としての使命を全うする為にセンターに所属したのに、これまでに幸せにできた人間はいない。皆、挫折によって立ち直れないほどに打ちひしがれ、更に不幸な人生を歩む者もいた。
「君のやり方が間違っているんじゃないのか?どん底に落とすだけが我々の仕事じゃないんだから!」
上司には何度もそう注意された。そう、私は不器用な挫折なのだ。高い志を持って仕事を始めたのに、このままでは挫折しそうだ。
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