転星物語

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好意に気づいてから、かの方が役目を全うするまで。 あっという間だった。 「テン。あなたは心配性ですね。」 「お嬢様、あなたが星になったら必ず見つけます」 「ありがとう。信じています。」 「ならば、あの笑顔を見せてください」 「あの笑顔とは…?」 「私がお嬢様を必ず探し出すと約束した時の笑顔を」 その時かの方は戸惑ったような表情を浮かべた。 「テン。もう、ここまでで大丈夫ですよ。」 「しかし!」 「(わたくし)は一人でいけます」 「なぜ、お嬢様が選ばれたのでしょうか」 「(わたくし)は美しすぎたのでしょう。人々を惑わす災厄にならぬよう太陽神様直々に(わたくし)を消してくださるのです。」 「そんなこと!」 かの方が私の手を握る。 そのあったかい手の熱がじわじわと感じた。 「(わたくし)は良い人になろうと努力しました。家族でさえも本音を出せず、いつしか本音がわからなくなりました。でもね、テン。あなたに言った探してほしい気持ちは本当です。初めて強く思いました。どうか(わたくし)のことを忘れないでほしい。それに、(わたくし)のそばにずっといてくださりありがとう。」 握られた手が離され、かの方はいってしまった。 その後、しばらく呆然として過ごし、旦那様のところに戻った時も曖昧だった。かの方が亡くなるということに対して、私は今、何を思っているのか。それがふわふわと舞っていて落ち着かない。 「探さなければ……」 夜空を見上げ、輝きを探す。 頭がくらくらして集中できない。 「どこに、いらっしゃるのですか…」 どうして自分はこんなにも弱いのだろう。かの方のように強くなれないものだろうか。いや、今はそんなこといい。ただかの方の星を探すだけ。 「あい、たい、で、、す、、、」 眠りは思考を遮り、夢へと迷い込ませる。 ああ、かの方が笑っている。 その姿を追いかければ遠ざかり、 止まったら止まる。 なぜ、待ってくれないのですか。 走る。手が届くまで。かの方にこの思いが届くまで。 なぜ、人とはいなくなってから気づくのでしょう。 あまりにも薄い感情が燃え上がるのでしょう。 なぜですか? 私にはわかりません。 賢いあなたに聞きたい。 私になぜ、探せとおっしゃったのですか? あなたのお姿など一向に見つかる気配がありません。 麗しいあなたのことだから一番星となったと思ったのに。 あなたはなぜこうにも捕まえられぬのでしょうか?
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