7人が本棚に入れています
本棚に追加
不思議なことだが、あの偽の過去を体験してから、俺の人生は良い方向に転がり始めたような気がする。
「えーっ、いくらなんでも、それは無理だろ!」
「無理なもんか!気合いさえあれば出来るって!」
ケイジはそれからも時々電話をくれた。
忙しいようで、いつもほんの数分の短い会話しか出来なかったが…
ケイジは、今でもたまに、ヴォルケイノのメンバーだったシンや葵とも連絡を取ってるらしい。
俺がいなくなった後も、バンドは存続していたそうだ。
だが、ヴォーカリストがどうもしっくりいかず、何人かが代わり、そのうち、ケイジも家業を継がなければならなくなって、バンドは自然消滅したらしい。
だが、ケイジは今でもギターが好きでやめられず、趣味で弾いてるってことだった。
ケイジは、俺と連絡が取れたから、復活ライブをしようなんてとんでもないことを言い出した。
歌なんて、もう何年も歌ってない。
あの頃の金属みたいなハイトーンヴォイスが、今の俺に出せるだろうか?
いや、それ以前に、今のこの落ちぶれた俺の姿を見たら、昔のファンも興ざめするんじゃないだろうか?
そうは思いながらも、その誘いはとても魅力的なものだった。
また、煌びやかなライトを浴び、ステージで歌えるとしたら…
考えただけでも興奮してくる。
最初のコメントを投稿しよう!