右の道

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「あ、ケイジ…遅いけどどうかしたの?」 「すまない。実は今日行けなくなった。」 「そうなの…わかった。 じゃあ、また連絡してね。」 今日、俺はレストラン『ヴォルケイノ』で、翔と会うことになっていた。 その店を経営しているのは、幸親子だ。 翔がいなくなってしばらくしてから、幸は妊娠していることに気付いた。 翔はどこに行ったか、手掛かりさえなく…それでも、幸は、その子を産むと言った。 俺はあいつのことが気になり、しょっちゅう様子を見に行っていた。 そのうちに、なんとなく幸に惹かれ…俺は、幸に告白したが、あっさりとふられた。 「私は、翔さんを待つから…」 そう言って、幸は笑った。 やがて、娘が生まれた。 翔に目元がよく似ている可愛い子だ。 幸は、女手一つで苦労しながら娘を育てあげた。 レストランを開業したのは、半年ほど前のことだ。 「この名前にしていたら、いつか翔さんが来てくれるかもしれないでしょ?」 そう言った時の幸はとても嬉しそうな顔をしていた。 幸は、翔がいなくなってからもずっとあいつのことを愛していたようだ。 だから、翔から連絡があった時、あいつを幸の店に連れて行って、二人をびっくりさせてやろうと考えた。 翔は、幸のことを訊かなかった。 一番気になってることだろうし、今、一人だと言っていたから、きっと、翔も幸と同じ気持ちなんだろうと思った。 今日は二人にとって最高の日になるはずだった… なのに、なぜ、こんなことに…… 俺は、悔しさに拳を握り締めた。
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